物撮りで写真の見映えが改善しないとき、カメラやスマホの設定より先に照明を見直すほうが効果的なことがある。購入者は商品の色や質感で購入を判断するが、ライトが不適切だと実物と異なる色に写り、受け取り後のクレームにつながる。
物撮りのライティング全体の基本は「物撮りの完全ガイド」にまとめているが、本記事ではライトを選ぶ際の種類と数値の見方、光の当て方の起点となる構成に絞る。
撮影用ライトの主な種類と物撮りへの適性
LEDライトの形状によって光の性質が変わる。形状を先に選んでから製品スペックを絞るほうが、購入後の「思ったのと違う」が少ない。
LEDパネル型は面全体から光が出るため影が出にくく、アクセサリーや小物のフリマ出品に向いている。スマホ・カメラどちらにも取り付けられるモデルが多く、置き場所を選ばないのが利点だ。たとえばUlanzi VL-81はCRI95+・3,200〜5,600K対応で、1台から始めるときに選ばれやすい製品の一つだ。
2灯セットは左右から光を当てることで影を抑えながら立体感を残せる。バッグや靴など少し大きめの商品を背景ごと撮るのに適しており、スタンドをそれぞれ独立して向きを調整できる。NiceVeediの2パックセット(2,800〜6,500K対応)のような製品がこの構成で使われる。
ソフトボックス型は内部のディフューザーが光を大きな面に拡散させ、硬い影が出にくい。色・素材感の正確さが求められるアパレルやコスメに向く。一方で組み立てに一定のスペースが必要で、設置と収納に時間がかかる。
撮影ボックス内蔵型は背景と照明が一体になっており、30cm以下の小物であれば置いて撮るだけで完結する。フリマ出品を量産したい場合や、撮影の準備に時間をかけられない場面で選ばれる。撮影ボックスと独立ライトの使い分け基準は「撮影ボックスの選び方」を参照してほしい。
リングライトは人物・配信向けに設計されており、商品撮影ではレンズに丸い映り込みが入ることや、立体感が出にくくなるケースがある。物撮りには形状の異なるライトのほうが扱いやすい。
選ぶときに確認したい3つの数値
製品を比較するときに「明るそう」「安い」だけで選ぶと、撮影後に色が実物と違うという問題が出やすい。以下の3つの数値を事前に確認する。
演色性(CRI / Ra値)
演色性は「光の下で色がどれだけ正確に見えるか」を示す指数で、自然光がRa100に相当する。一般的な蛍光灯はRa60前後で、商品撮影ではRa90以上を目安に選ぶとよいとされている。撮影指導の現場でRa90のLEDと通常蛍光灯を実際に比べると、肌色や赤みの再現に差が出る(注: 差の大きさは製品・被写体の色によって異なる)。
赤・橙系の色ほど影響が出やすく、コスメ・アパレル・食品はRa90未満のライトだと青白く、または濁って写ることがある。製品スペックには「CRI95+」「Ra90」などの表記がある。数値が記載されていない場合は、演色性が低い可能性があるため確認しておくのがよい。
色温度
色温度は光の色味を示す数値(単位はK/ケルビン)で、低いほど暖色(電球色)、高いほど寒色(昼白色・白昼光色)になる。**商品撮影のベースは昼白色(5,000〜5,500K)**が使われることが多く、白背景でクリアに見せたい商品に適している。
バイカラー型ライトは3,200〜5,500Kの範囲を手元で切り替えられるため、室内の蛍光灯や自然光との混光が起きたときに調整しやすい。食品・木工品など暖かみを出したい場合は3,500〜4,000K寄りに下げる選択肢もある。スマホ・カメラのホワイトバランスもライトの色温度に合わせて固定すると色かぶりを防ぎやすい。
明るさと調光機能
ライトの明るさはルーメン(lm)で光源の総量を、ルクス(lux)で被写体に届く量を示す。ルクスは距離が変わると値も変わる点に注意が必要で、「1m離れたときの照度」をメーカー仕様書で確認するのが正確だ。
白飛びと暗さのどちらも問題になるため、段階調光(1〜100%)ができるモデルを選ぶと撮影環境に合わせた微調整がしやすい。調光できないモデルは、ライトと商品の距離を変えることで光量を調整するが、距離が変わると配置の自由が下がる。
商品カテゴリ別の考え方
商品の特性によって、優先すべきライトの性質が変わる。
アクセサリーや小物(スマートフォン、雑貨など)は、影が出にくいLEDパネル型または撮影ボックスが扱いやすい。商品サイズが小さいため、コンパクトな構成で完結することが多い。
アパレルや布製品は、素材の質感(ニットの毛羽立ち、シルクの光沢など)を再現する必要があるため、演色性Ra90以上のライトを選ぶ。大きな面からの拡散光が繊維の質感を自然に写す。
コスメ・化粧品は色の正確さが購入判断に直結する。口紅や頬紅の赤・橙は演色性の影響が出やすく、Ra95以上を選ぶと実物の発色に近くなりやすい。
食品は暖かみのある光が食欲をそそる見映えにつながる。色温度を昼白色より若干低め(3,500〜4,500K前後)に設定すると、白色光より食材らしい見え方になる場合がある。ただし色温度の設定は商品と撮影環境によって最適値が変わるため、試し撮りで確認するのが確実だ。
光の当て方の最小構成
まずキーライト(主光源)1灯を、商品の斜め前方45度・商品と同程度の高さから当てる。真正面からは立体感が出にくく、真横からは反対側が暗くなりすぎる。この45度という角度は変えられる幅があり、正面寄りにすると影が減り、横寄りにすると立体感が強くなる。
影が強すぎる場合は白い厚紙またはレフ板をライトの反対側に置き、光を反射させて補う。影を完全につぶすのではなく、立体感を残す程度で止めることが多い。1灯+レフ板の構成が最小の起点で、そこから不足を感じたタイミングで2灯目やソフトボックスを加える順番が出費の無駄が少ない。
2灯目を足す場合は、キーライトより光量を落とした設定で反対側から当てると、影を抑えながら立体感を残しやすい。ライティングの詳しい組み方は「商品撮影のライティング完全ガイド」でまとめている。


